昨秋からずっと釣りに行っていない。潮の香りや手にこびりついたオキアミのにおい、魚の食い付きを示す竿(さお)の振動…。何もかもが恋しくなり、ついには夢の中にまで沈むウキの残像が出た。我慢の限界だった。何でもいいから魚を釣りたい。同じ“症状”に襲われていた先輩記者と連れ立ち、道具一式を車に積み込んでいざ、庄内へ。
狙う魚はヘラブナ。場所を「どこもポイント」という玉虫沼(山辺町)に決めた。最低でも1匹は釣れるはずだ。まずは道具の準備。当然何一つ持っていないので、お世話になっている山形市内の釣具店に相談してみる。
酒田の釣り具屋で得た「吹浦でアジが釣れている」という情報を基に、吹浦漁港へ向かった。やや冷たい風が吹くものの、適度に潮が動いていかにも釣れそうな雰囲気。目の前にそびえる鳥海山の山容が快晴の夕空にくっきりと映える最高のシチュエーションの中、しばし無言で釣りに没頭した。
クライマックスは1時間後、魚の活性が上がる「夕まずめ」の時間帯に訪れた。ウキが沈み、慣れ親しんだ「ググッ」という手応え。思わず絶叫した。「来ました! アジです!」。しなる竿と生命反応を示す断続的な振動。興奮の中、大騒ぎしながら引き上げてみると、糸の先にはアジよりはるかに鈍重な容p。「…あ、フグでした」
通常ならがっかりなのだが、それでもこの日ばかりは特別。無念さはみじんもなく、数カ月ぶりに味わった竿の「ブルブル」の感触に不思議と大きな満足感を得た。この日収穫なしの先輩記者には、普段はフグに見向きもしないのに羨望(せんぼう)のまなざしを送られた。
餌取りの代表格であり、糸をかみ切ることも多いフグは普段あまり歓迎されない「外道」。狙ったアジこそ釣れなかったが、これだけは自信を持って言える。日本中に、あるいは世界中に、この日のわれわれほどフグに歓喜し、高揚した釣り人はそうそういないだろうと。釣り好きゆえに、この“大いなる勘違い”がなされたのだということを。(T)
2007年5月25日(出羽釣りバカ)
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